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靴の歴史

「スポーツジャケット (Sports Jackets)」

ジャケットの語源と歴史

 英語のジャケットは、15世紀になってフランス語のJaquetteが転じてJacketと呼ばれるようになったとのことです。もともとは中世の男性が鎧の下に着用した胴着のことを、フランス語と英語でJaque/Jack/ジャックと云われ、同時にこの言葉は当時農家の男性が着ていた事もあって、百姓を意味していたようです。

 ジャケットは、15世紀後半には男性用のもっとも一般的な上着として、広く着用されるようになっていきます。その形はタイトな胴回りの作りで、背中にはヒダ/プリーツを施し、素材は厚地のシルクやビロードを使った豪華な物もあったようです。

 16世紀中頃には、この種の上着はダブレット/Doubletと云う胴衣の上に着られるようになり、名称もJerkin/ジャーキンと呼ばれていたとのことです。ジャーキンは17世紀中頃までは着用されましたが、18世紀になるとコート型の丈の長い上着が一般的になり、丈の短い上着は労働者や地方の人たちの日常の服として残っていきます。

 19世紀に入るとコート型の丈の長い上着は、燕尾服やフロックコートとなって紳士服の基準となる型になり、ジャケット型の丈の短い上着は、背広の成立とともにその上着として用いられる一方、ブレザーやノーフォークジャケットなどスポーティーなものに継承されていきます。

ジャケットの素材と柄

 秋冬物のジャケット生地の中で代表的な素材と云えば“Tweed”。ツィードとはスコッチの総称であり、もともとはスコットランド地方において自家で紡いだ糸で製織した、いわゆるホームスパンをツィードと呼んでいたとのことです。時代と共に量産の必要に迫られ、現代では糸作りもさることながら手織りに限らず機械で織られたものであっても、スコッチ風紡毛生地全体をツィードと称するようになったようです。

 ツィードの名称の起こりとしては、二つの説があると云われています。一つはツィード川流域で生産されていたことから、その川の名をとって付けられた説。 もう一つは19世紀半ば、ロンドンの商社に委託販売をすることになった時に、伝票にTwill/ツィル/綾織りと書くところを、書記の癖でTweed/ツィードと読めるような字で書いたことから、ツィードと呼ぶようになったという説です。またツィードの中でもジャケットに適した柄はいくつか有りますが、代表的な3柄を紹介致します。

グレンチェック

 格子柄の代表のひとつでもあるグレンチェックは、スコットランドのネス湖に近いグレン・アーカート渓谷一帯で織られていた柄で、場所にちなんで付けられた名称というのが一般的に知られていますが、シンプルなグレンチェックの上にオーバーチェックを切ったものは、英国皇太子エドワード7世が好んだ柄ということで、プリンス・オブ・ウェールズとも呼ばれています。
  現在ではグレン・プラッド、プリンス・オブ・ウェールズ、ウィンザー・プラッド等を総称してグレンチェックと呼ばれていますが、イタリアではこの柄はウェールズ皇太子をイメージしてプリンチペ・ディ・ガレス、略してGalles/ガレスと呼んでいるとのことです。

ガンクラブチェック

 通常2色で出来ているシェパードチェックにもう1色のカラーチェックを重ねたものをガンクラブチェックといいますが、実際は千鳥格子の組織でも3色使いの物もガンクラブチェックと呼ばれているようです。またトーンの近い多色使いや、ツィードなどの紡毛素材は柄の表情も良く味わいが豊かになります。
 語源は1874年、アメリカ狩猟クラブ結成時にこの柄をユニフォームに用いたことから、ガンクラブチェックと呼ばれるようになったとのことです。

ドッグ・ツース/千鳥格子

 柄の見た目から付いた名称ですが、日本、イタリア、フランスは共に鳥が元になっています。
 日本では古くからこの柄は千鳥格子と云われ、千鳥が群れをなし飛んでいる様を見立てたものを呼んでいます。
 イタリアとフランスではピエ・ド・フール/雌鳥の足、大きめな柄をピエ・ド・コック/雄鶏の足と呼んでいますが、大きさによる厳密な分け方は難しいようです。
 また英語圏では犬の牙に見立てたと思われるドッグ・ツースと、大きめな柄を猟犬の牙/ハウンド・ツースと呼び分けているようですが、やはりドッグとハウンドの区分けは定まっていないようです。

生地の目付けと番手

 かなり専門的なことになりますが、生地、素材を判断する材料には目付け/ウエイト、番手/ヤーン・カウント、スーパー/ミクロンの平均繊度があります。以前は目付けよりも、スーパー110、120など繊維自体の太さ/平均繊度を重視していましたが、近年ヨーロッパの生地メーカーは、目付けとコンポジション/素材内容を表示し、スーパー表示を明記しているところは少なくなってきているようです。
 ここで勘違いし易いのが繊維の太さのスーパー/ミクロンと、糸の番手のヤーン・アカウントを混同していまい、スーパー120を120番手と思われることが多く有るように感じます。

目付
生地幅/ダブル幅1.5mを基準に1.0mの重さを表示していて、スーツ生地は200~300g台が中心となります。

番手
メートル法で表示されていて、1,000gの羊毛を1,000mまで伸ばした太さを一番手と定め、スーツ生地では60~80番手/60,000~80,000mの糸を使用していると云われています。

平均繊度
ピュア・ニューウールを対象に一定の範囲での繊度の割合で決定されます。18.5ミクロンの繊維/繊度をスーパー100として、0.5ミクロンずつ細く/小さくなるごとにスーパー表示は10ずつ大きくなっていきます。細番手の糸をつむぐ場合には、必然的に細いミクロンの繊維を使うようになっていきます。

映画の中におけるスポーツジャケット

 1920~30年代を題材とした映画で、スーツ・ジャケットスタイルの素敵な着こなしが印象に残るものといえば、アガサ・クリスティーが描く世界ではないでしょうか。「地中海殺人事件」、「ナイル殺人事件」では、コロニアルスタイル風の麻スーツやピンチバックのジャケットを着こなし、近年のリゾートウエアとは違った優雅でエレガントな雰囲気を強く感じます。
 エルキュール・ポアロを中心とした各キャストのお洒落なスタイルは、是非とも参考にして頂きたいと思います。


参考文献
・大西基之氏著『メンズ・ウエア素材の基礎知識』
・日本大百科全書
・エスカイア版20世紀メンズ・ファッション百科事典

 

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