魔法のローファー
毎年ゴールデンウィークには、日立にあそびにいきます。
いわきに仕事でもう20年以上かよっているのですが、10年ぐらい前に常磐道が雪で日立から先が通行止めになり、無理やり下ろされた日立のまちで1泊し、ぶらぶら散策してすっかりこのまちが好きになってしまいました。
特にうれしかったのは昭和のままの古本屋と靴屋さんです。古本屋には戦前、戦後の雑誌が山のようにあり、靴屋にはかつて欲しくて欲しくて憧れていたトラッドシューズの、当時のデッドストックが店内の棚に普通にならんでいるのです。
自分は高校の時にIVYと出会い、ローファーという魔法の靴を知りました。上に何を着てもこの靴をはいた瞬間に憧れのアメリカンになってしまうのです。毎日、毎日ローファーをはいて過ごしました。
初めてはいたのはVAN-REGALのローファーです。そのあとでリーガルがブラウン社と提携した美しいローファーを出しました。しかし何といっても憧れたのはSEBAGOのローファーです。はいていた人はめったにいませんでしたが、アメ横に見に行ってはため息をついたものです。
当時お店のひとに、アメリカで最初にローファーを作ったのがSEBAGOだと教えてもらい、なおさらかっこよく見えたものでした。あとで最初にビーフロールという、アッパーとサイドを肉巻きのように縫うやり方を考え出したのがSEBAGOだと分かりました。
60年代のデッドストック
その後、自分も社会人になって買い物もできるようになり、SEBAGOも日本で一般に販売されるようになりました。茶、黒、ワインとビーフロールが増えていき、BASSのようなハーフサドルタイプもはきました。
1946年創業ですから今年70周年になるわけですが、グッドイヤー製法とマッケイ製法のいいとこ取りをした「ドックサイド製法」という特許でつくるローファーは、グッドイヤーの丈夫さとマッケイの履きやすさを併せ持った、実用的でかっこいいオーセンティック・トラッドです。
コバを二重ステッチで止めてあるので雨に強く、水がしみて来ません。このステッチを切ると底がすぐ外れるので、ソール交換がやりやすいそうです。自分は磨り減った皮底を、ビブラムのダイナイトソールに交換しました。
しかし残念なのは、いまのSEBAGOはアメリカではなくアジアで作られています。これはアメリカの老舗のブランドでも数多くみられる現象で、アメリカで作られているものは数少ないようです。
今年のゴールデンウィークに日立に行った時に、いつもの靴屋さんでデッドストックのSEBAGOを見つけました。60年代のIVY全盛のころの、欲しくて欲しくて憧れた、Made in U.S.A のSEBAGOです。
サイズもぴったり。値段も当時の値札が付いていて、そのままの価格で手に入れることができました。これをはくと、瞬時に高校時代のIVY BOYの世界に飛んで行きます。
|