世界一トラッドな車
車が好きです。というより車を運転するのが好きなのです。
アイビーボーイが憧れていたのはフォルクスワーゲンのタイプⅠ、そうあのビートルです。カラフルで丸いボディはアイビールックによく似合っていました。ファッションとコーディネイトできる車だったのです。
アルバイトをしながらビートル貯金をはじめ、社会人になった年にはじめてのボーナスをプラスしてオレンジ色のビートルを中古で買いました。1302のアイロンテール、フラットフロント、スポルトマチック仕様でした。
新青梅街道ぞいのビートル専門店で買ったのですが、納車の時に驚いたのは、いろいろなアドバイスと一緒にファンベルトの交換方法を教えてくれたことです。
「ビートルはよくファンベルトが切れるので、いつも予備を持っていてすぐ交換できないとビートルに乗ることはできないよ」とのことでした。
ビートルに乗って感動したのは、車と対話しながら運転するという楽しみを味わえたことです。雨の日には機嫌をとり、晴れの日は楽しく、坂道は励ましながらと、道具というより生きもののような楽しさです。
女の子にはとにかく人気があり、ドライブにさそうと大抵OKだったのですが、女性を助手席に乗せるととたんに機嫌が悪くなり、よくファンベルトが切れました。
そうか焼き餅をやいているのかと嬉しくなったりしたものです。
頑張れ、フォルクスワーゲン!
ベンツ社に勤めていた若き日のフェルデナンド・ポルシェ博士と同じく若き政治家の卵アドルフ・ヒトラーが出会い、夜を明かして理想の自家用車について語り明かした結果誕生したのがビートルです。
長年にわたって世界の乗用車を牽引し、自分のような熱狂的なビートルファンを作ってきました。自分は最初のオレンジのビートルから、黄色、紺色、パープルのカブリオレ、黒のスポルトマチック、黒のカブリオレと6台乗り継いできました。
現在、最後の2台は友人のフォルクスワーゲン専門店に預けていて、時間が出来たときに2台を1台にレストアしようかと楽しみにしています。
この数か月、フォルクスワーゲン社がジーゼルエンジンの排気ガスの数値をごまかす不正ソフトを組み込んで、検査の目を逃れてきたというニュースが地球を駆け巡り、驚くやら、呆れるやら、悔しがるやら、ぼくらビートルファンはもちろん、世界中の人々の心を踏みにじってしまいました。
「しっかりしろ、フォルクスワーゲン。ジャーマンエンジニアリングの誇りはどこへやったんだ」
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