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あえてシャツインにこだわる。

あえてシャツインにこだわる。

シャツとパンツとベルトの楽しみ。

 春到来とともに暖かい日が続くようになると、シャツにパンツの着こなしが楽しくなります。

 最近のTVのバラエティー番組で、シャツをパンツの中に入れるのはオヤジ臭くて格好が悪いと言われていて、シャツを外に出して着るモデルが格好いい着こなし例として紹介されています。

 自分は年代的には紛れもないオヤジなので異存はありませんが、いかにもオヤジは格好悪いというコメントには納得がいきません。

 まずお洒落や着こなしに関しては、さまざまな人生の場面や状況を体験したオヤジのほうがあきらかに優れているにきまっています。若いころ身近にいるダンディなオヤジを見て、自分にとっては東急百貨店宣伝部の植松国臣アートディレクターですが、早くああなりたいと憧れたものです。

 婦人画報社で発行された「TAKE IVY」の写真集を何回も何回も眺めては着こなしを研究しました。シャツを中に入れてはいたプレーンフロントのパンツと、その2点の主張をバランスよくコーディネイトするベルトの選択。

 とくにカジュアルなときは、シャツの柄とチノパンの色にリボンベルトのコーディネイト。メンズファッションはなんとクリエイティブで奥が深いのかと、感激したものです。

 シャツを上に出すということは、この楽しみを自ら放棄することになります。まだファッションの楽しみを知らない10代の若い人ならともかく、リタイアしたいいオヤジが、シャツを出してうれしそうに歩いているのは残念です。大きなお世話ですか。

春の散策コーディネイト。

 シャツの色や柄の豊富さに比べて、それとパンツを結ぶ役目のリボンベルトの種類は必ずしも豊かとはいえません。もっとこういうパターンのベルトがあればいいのにと思うことが多くなり、それなら自分で作ろうということになりました。

 新宿の洋装材料店オカダヤに行って、山のようにあるリボンや生地の中からコーディネイトに欲しいものを選び、レザークラフトで作ります。アメリカにいたとき、趣味でU.S.レザークラフター協会の会員になっていたので、道具や材料を持っていたのが役に立ちました。

 それ以来手作りのベルトは30本をこえました。自分があえてシャツインにこだわるのはベルトを見せたいからでもあるのです。

 どうしてもシャツを上に出したいときはプルオーバーのシャツがあります。プルオーバーシャツは丈が短く裾が横に平にカットしてあるので、アロハシャツやオープンシャツのように上に出して着るようにデザインされているのです。もっとも自分は、プルオーバーシャツをパンツの中に入れて着るのも好きです。

 こんな春らしいシャツとパンツのコーディネイトをしたときに欠かせないのがブレザーです。春は気温の変化がはげしいので肌寒くなったときにちょっと羽織れるネイビーのブレザーです。

 春のカジュアルな着こなしは、冬に我慢していた色たちが、ぱっと輝き出すので、それを気持ちよくおさえるにはネイビーのブレザーが最適なのです。

 ブレザーはどんなコーディネイトにも見事に応えてくれますが、自分はプルオーバーシャツ、チノパン、リボンベルトに、ブルースェードのローファーと、ネイビーブレザーで春の街を散策するのが大好きです。

(プルオーバーシャツ/SPICE ISLAND、パンツ/FIORUCCI、ベルト/ORIGINAL、ネイビーブレザー・ローファー/KEN COLLECTION)

 
著:小熊俊行(おぐま・としゆき)
大手広告代理店を経て、(株)マーベリック出版を設立。米国DC COM社と提携し「月刊スーパーマン」創刊。
1980年(株)バス・コーポレーションを設立、現在に至る。
東京ディズニーランド開業、横浜博覧会、関西国際空港開港等のプロジェクトに参画し、好意づくりのコミュニケーションを目指す。
また地域のまちづくりや活性化事業のアドバイザー等、生活者のニーズを満たすまちづくりや担い手づくりなどの支援活動に携わる。
トラッドなアイビーファッションの愛好者であり、2014年より(株)信濃屋の顧問を務める。
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