ボタンダウンの襟のカーブ
2週間に1度、休日は朝からアイロン掛けをします。部屋のすみに畳んであったアイロン台を、中央に持ってきて組み立て、その上にアイロンを置いて通電してから、温まる時間に2週間分たまった洗濯物を取りに行きます。
基本的に何でも掛けますが、一番のこだわりはシャツです。それも、自分はIVY BOYなのでほとんどがボタンダウンシャツです。ボタンダウンのこだわりは、ネクタイをしめたときにほんのりとふくらむ襟のカーブです。
はじめて就職をした頃、ネクタイをして仕事に行くのがうれしくて、毎朝鏡の前で数少ないVゾーンのコーディネイトに迷っていたのですが、クリーニング店に出したシャツの襟がどうにもしっくりこなかったのです。クリーニング店に襟のカーブのことを言うのが恥ずかしく、そこでシャツだけは自分でアイロンを掛けようと決心しました。
それからどうしたらきれいなカーブが出るかと、いろいろ研究をしました。襟を裏返して、スチームがたくさん出るアイロンか、霧吹きでほどよく湿り気を与え、高温で真ん中から襟先に向かって少しずつ掛けていきます。すべるようにアイロンを動かすのではなく、おさえるように移動するのがこつ、まさにプレスです。
襟先は外に軽く引っ張りながら、アイロン台より1~2センチ浮かしておき、上からおさえるように掛けると、襟に内巻きのかすかな癖がつきます。それを
表に反して、今度は襟先から中心に軽くすべらせます。こうすると襟先の縫い目の皺がきれいになります。
袖口の迷路
襟のカーブに納得のいくアイロンができるようになっても、まだしばらくは袖口の迷路から抜け出せずにいました。というより、どうやって袖口にアイロンを掛けるのかさっぱり分かりませんでした。
シャツの袖口には肩、脇のゆとりを、カフスの長さに収めるためにいくものダーツがあります。2本ダーツ、3本ダーツ、なかには裏側の縫い目を隠すダーツが付いているものもあります。しかもカフスのセンターと肩の縫い合わせのラインはつながらないのです。いったいどこを基準に掛けたらいいのでしょうか。
クリーニング店からプロの技をぬすんでやろうと視察に行きました。するとどうでしょう、プロは長い円錐形の器材を作業台の上に立てて、それに袖を上からすっぽり入れてジューっとプレスしているのです。これなら、表のダーツも裏のダーツも縫い目も関係なくかかります。
「これは反則じゃないか。プロのアイロンの技はどこへ行ったんだ」と憤りながら、顔なじみのおじさんに素直にご教授をねがいました。そしてそれ以来長年の袖口の迷路から抜け出し、アイロン掛けを楽しめることになったのです。
シャツは袖口からはじめて、襟で仕上げます。カフスを丸く掛けた後、両端をカフスボタンをするときのように合わせてダーツをかけます。そのあと下の縫目にそって畳むように袖口から肩に掛け上げます。肩に到達したところで、前身ごろと後ろ見ごろを重ねて肩をプレスし、前身ごろ、後ろ見ごろ、反対の前身ごろの順でプレスします。
そして最後に、前述したように襟を仕上げて完成です。所要時間はアイロンとアイロン台にもよりますが、自分はきめ細かいスチームが出て滑りがいいT-fal PRIMAGLIDE30のアイロンと、アイロンを斜めに置けてコードのホールドがいいFRZ.Noblesseのアイロン台の組み合わせで、1枚、約20分かかります。
2週間分14枚のシャツをプレスするのに休みなしで4時間半、何だかんだで6時間です。遅めの朝食を済ませて、朝9時からスタート、ランチを食べて夕方4時ごろ終わります。
好きな音楽を聴いたり、いろいろ思いを巡らしたり、月2回の至福の時間です。
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